メタルギア ソリッドの真実

「敵に見つからないように隠れ、敵基地へ潜入する」。タクティカル・エスピオナージ(戦略諜報)アクション『メタルギア』シリーズは、1987年にMSX2専用タイトルとして誕生した。そして初代プレイステーションからプレイステーション3へ、またプレイステーション・ポータブルへ。ゲームハードにあわせてゲームデザインは進化していった。20世紀最高のストーリー、21世紀最高のゲームシステムと評された『メタルギア』シリーズは、ひとつのサーガとして読み解くことができる。それは1960年代から2010年代の約50年に渡って世界と闘い続けた2人の主人公、ビッグボスとソリッド・スネークの物語。彼らは「GENE(遺伝子)」の運命と戦い、「MEME(文化的遺伝子)」を未来に残すために語り伝えながら、「SCENE(時代)」の変化に翻弄されてきた。「歴史に記録されることのない、誰も知らない真実」がここにあるのだ。
※本特集サイトは角川書店より2004年に刊行した「METAL GEAR SOLID Naked」をベースに、25周年版として当時未発売だった作品を追加、作成したものです。


特集

「ロケットの夏」から「核の冬」へ

小島秀夫―我ら神亡き時代の神の語り手として


 
  • 任務は、愛する人を殺すこと。
    壮大なサーガの始まりの物語。ネイキッド・スネークというコードネームを与えられたひとりの男が「ビッグボス」という称号を得ることになった「バーチャスミッション」と「スネークイーター作戦」を描く。これまでの『メタルギア』シリーズでは市街戦や建造物での潜入作戦が行われていたが、本作は大自然のジャングルが舞台。ただ、物陰に隠れるだけでなく、ユニフォームやフェイスペイントを替え、周囲に溶け込む「カムフラージュ」ができるようになった。なお、このシステムはのちの『メタルギアソリッド 4』でも発展的に採用されている。「究極の生存」を意味する完全版の『サブシスタンス』も発売された。『メタルギア』シリーズ正史の発売順としては5作目。
  • DETAIL
1961
ソ連・ガガーリンがヴォストーク1号で初の有人飛行に成功
1962
米・キューバにソ連製ミサイルを確認。「キューバ危機」が勃発
1963
米・ケネディ大統領暗殺
1965
米・ベトナムに対し北爆開始
1969
米・アポロ計画実施、初の有人月面着陸

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  • 求む、潜友。
    ザ・ボスを失ったビッグボスが私設軍隊を結成し、メタルギアを手に入れる「ピースウォーカー計画」を描く。世界で最初のメタルギア「メタルギアZEKE」が初登場。敵地へ自ら潜入する「ミッション」だけでなく、「マザーベース」を運営、拡大していく「オペレーション」要素も兼ね備えている。携帯ゲーム機PSPの特徴を活かした「協力プレー」の要素を拡大。潜友(戦友)とともに「ミッション」へ挑むことができた。また様々な会社を迎えての多彩なタイアップも話題となった。2011年にはPS3版/Xbox360版『HD EDITION』も発売。『メタルギア』シリーズ正史の発売順としては7作目。
  • DETAIL
1971
ソ連・初の宇宙ステーション・サリュート1号成功
1972
米・アポロ17号でアポロ計画終了
1973
米・地上部隊ベトナムから撤退
1975
リチャード・ドーキンスが「利己的な遺伝子」を発表
1977
米・デルタフォース(第1特殊作戦部隊D分遣隊)創設

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  • OPERATION INTRUDE! METAL GEARヲハカイセヨ……。
    司令官ビッグボスの指示のもと、特殊部隊FOXHOUNDの新人兵士ソリッド・スネークの最初のミッションがはじまる。潜入する先は武装要塞国OUTER HEAVEN。そこでは核搭載二足歩行戦車メタルギアが開発されていた。のちに「アウターヘブン蜂起」と呼ばれる事件を描く。パソコンMSX2向けに開発された小島秀夫監督の処女作。「敵に見つからないように、敵基地へ潜入する」というゲームデザインとハードボイルドな世界観が高く評価された。ギネス世界記録「GAMER'S EDITION 2008」で「ステルス要素を完全に取り入れた最初のビデオゲーム」として認定されている。『メタルギア』シリーズ正史の発売順としては記念すべき1作目。Wiiバーチャルコンソールで「MSX2復刻版」を配信中。2011年発売のPS3版/Xbox360版『MGS HD EDITION』にも収録。
  • DETAIL
1990
東西ドイツ再統一
1991
国際連合が多国籍軍を派遣、「湾岸戦争」勃発
1991
ソ連消滅、CIS(独立国家共同体)成立
1994
米・核実験禁止法を可決
1995
国連総会、「核実験即時停止決議」採択

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  • 潜入と破壊の美学。
    特殊部隊FOXHOUNDを離れたソリッド・スネークが、宿敵となったビッグボスと決着をつけるエピソード。のちに「ザンジバーランド騒乱」と呼ばれる事件を描く。ビッグボスの行動原理や戦う場所を失った兵士たちの末路を描くことでドラマ面も強化された。前作は「敵兵に見つからないように」潜入するゲームだったが、今作は敵兵がスネークの足音を感知し、スネークが壁をノックすることで敵兵を引きつけるといった「聴覚」をゲームデザインに組み込み、よりスリリングな潜入が行えるようになった。『メタルギア』シリーズ正史の発売順としては2作目。本作がKONAMIのMSX向けオリジナルソフトの最終作となった。Wiiバーチャルコンソールで「MSX2復刻版」を配信中。2011年発売のPS3版/Xbox360版『MGS HD EDITION』にも収録。
  • DETAIL
1996
英・世界初のクローン羊『ドリー』が誕生
1996
国連総会で包括的核実験禁止条約(CTBT)を採択
1997
IBMのコンピューター・ディープ・ブルーがチェス世界チャンピオンを破る
1998
印・2度目の核実験を実施
1999
欧州連合の加盟11ヵ国でユーロを通貨として使用

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  • 「!」なゲーム。
    アラスカで隠遁生活をおくるソリッド・スネークが「ビッグボスの遺体」をめぐり、戦場へ復帰するエピソード。のちに「シャドーモセス島事件」と呼ばれる潜入作戦を描く。ソリッド・スネークの出生の秘密が語られ、同じ遺伝子から生まれた兄弟リキッド・スネークが登場する。遺伝子と核兵器の流出をテーマとした物語がつづられ、メディアから「20世紀最高のシナリオ」と評された。ゲームソフトはプレイステーション向けに開発され、3DCG空間を活かした立体的な潜入作戦が行えた。振動コントローラを使った仕掛けやパッケージに隠された謎などアイデアが満載。レイモンド・ベンソンによる小説版も執筆された。『メタルギア』シリーズ正史の発売順としては3作目。
  • DETAIL
2000
日、英、欧の「国際ヒトゲノム計画」のチームがヒトゲノム解読を発表
2001
米・9月11日に同時多発テロ発生
2003
大量破壊兵器保持の疑いでイラクに多国籍軍が侵攻、「イラク戦争」勃発
2004
パキスタンの科学者が核関連技術の国外流出に関与

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  • 伝えなければいけないことがある。
    ソリッド・スネークが新型メタルギアを調査する「タンカー沈没事件」、新生FOXHOUND部隊のエージェント雷電がテロリストに占拠されたプラントへ潜入する「プラント占拠事件」を描く。新キャラクターの雷電が登場し、ソリッド・スネークから技術や思想を受け継いでいく物語になっている。プレイステーション2用として開発され、主観視点で銃器を撃てるほか、敵兵をホールドアップさせたり、倒れた敵兵を引きずったりと多彩なアクションが実現。「21世紀最高のゲームシステム」と評された。前作同様レイモンド・ベンソンによる小説版も執筆された。究極の完成形を意味する『サブスタンス』が完全版としてリリースされている。『メタルギア』シリーズ正史の発売順としては4作目。
  • DETAIL
2005
英ロンドンで同時爆破事件、エジプトで同時爆破テロ、仏で暴動が起きる
2007
米に端を発する「世界金融危機」発生
2008
米FDA、体細胞クローン技術による食品に安全宣言

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  • 散る。
    老化し、衰えたソリッド・スネークの戦いを描くエピソード。前作のその後の展開なども含め、これまでのエピソードに出てきた伏線や謎を解明する内容になっている。戦争経済に支配された世界や民間軍事会社の台頭、ID管理された戦争など近未来的な問題を提起している。周囲の環境にあわせて自動的に迷彩するオクトカムや、周囲の気配を察知するスレットリングなど、五感を駆使した高度な潜入ミッションが行えた。プレイステーション3用のゲームソフトとして開発され、2層式Blu-ray Discの中に収まりきらないほどのデータを詰め込んでいる。伊藤計劃による小説版も執筆された。『メタルギア』シリーズ正史の発売順としては6作目。
  • DETAIL
2009
リスボン条約発効、欧州連合(EU)の権限が拡大
2010
イラク駐留アメリカ軍戦闘部隊が撤退完了、現地軍はPMC各社が受託

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