MGS2 パッケージ
METAL GEAR 2 SOLID SNAKE
[ 1990.7.20 ] MSX2
METAL GEAR 2 SOLID SNAKE
[ 2004.10.11 ] 携帯ゲーム
METAL GEAR 20th ANNIVERSARY METAL GEAR SOLID COLLECTION
[ 2007.7.26 ] PlayStation2
METAL GEAR 2 SOLID SNAKE
[ 2010.3.30 ] Wii バーチャルコンソール
METAL GEAR SOLID HD EDITION(MGS3内収録「MSX2復刻版」)
[ 2011.11.23 ] PlayStation3 / Xbox360

戦場を求める男たちの最期の戦い

スクリーンショット

 米中ソの冷戦も雪解けが始まり、各地の地域紛争も融和を迎えようとしていた。ようやく核の脅威の時代は終わりを告げると思われていた、21世紀直前。ソ連、中国、中近東に隣接する中央アジアの民族自治区の小国ザンジバーランドに民族主義的軍事政権が樹立した。ザンジバーランドは世界各地の廃棄用核兵器貯蔵庫を襲撃。高純度の石油を精製する微生物(微細藻類)「OILIX(オイリックス)」を発明した、チェコの生物学者キオ・マルフ博士を渡米途中に拉致した。核兵器とOILIXによって世界に対し軍事優位を確保しようとしたのである。元FOX HOUNDのソリッド・スネークに極秘任務(オペレーション・イントルードFO14)が下る。その目的はザンジバーランドに単独潜入、キオ・マルフ博士の救出。
 スネークは潜入中に何人かの協力者たちと遭遇する。ジャーナリストとして潜伏していたCIAの工作員ホーリー・ホワイト。マルフ博士の護衛ナターシャ・マルコバァ。そして、以前メタルギアを開発していたペトロヴィッチ博士がいた。彼はザンジバーランドでメタルギアの開発を強いられていたのである。スネークに救出された彼は衝撃の事実を告げる。ザンジバーランドの指導者は、スネークが倒したはずのビッグボスなのだと。彼は武装要塞国OUTER HEAVENの崩壊後、新しい戦闘国家を作るために暗躍していたのだ。そして、彼らの軍備の切り札こそが新型メタルギア改D。スネークの脳裏に悪夢がよみがえる。すべての真相を知るためにスネークとペトロヴィッチ博士、ナターシャはマルフ博士の救出へ向かう。
 その救出を阻止しようと立ちはだかる数々の強敵、そしてかつてOUTER HEAVENで消息不明となっていた親友グレイ・フォックス。彼らは時代と政治の狭間に取り残された男たち。戦いの場を求めて、この地へやってきた。戦場を越えた理由なき闘いが繰り広げられる。死線を超えたスネークはマルフ博士の収容所へたどり着く。そして明かされる衝撃の深層。ここにもOUTER HEAVENの亡霊がいた。
 目的を果たしたスネークはザンジバーランドを脱出しようとする。だが、その前にメタルギア改Dに乗ったグレイ・フォックスが立ちはだかる。メタルギアを倒したスネークは、グレイ・フォックスと地雷源で殴りあう。肉体と肉体のぶつかり合いに打ち勝ったスネークは、遂にザンジバーランドの首領ビッグボスのもとにたどり着く。 ビッグボスは言う。「戦闘の緊張感を知ったものは、二度と戦場から離れられない。お前たちがただひとつ生きがいを感じるものを与えてやったのだ」。硫酸が立ち込め、即死必至の戦場でビッグボスとスネークの一騎討ちが始まる。はたしてスネークはビッグボスの呪縛から逃れることができるのか。"父殺し"を思わせる、宿命の闘いの決着は……。


生まれるはずではなかった物語

本作は1987年に発売された『メタルギア』の続きとして作られた。しかし、このゲームは当初生まれる予定のなかったものだった。当時、『メタルギア』は高い評価を集めたものの、MSX2という普及台数の少ないハードウェアに向けて発売されたため、一度きりの作品と見られていたのだ。事実、のちに登場したファミリーコンピュータ版『メタルギア』や海外版『メタルギア』の続編『Snake's Revenge』に小島秀夫監督は参加していない。
彼が『メタルギア2』の制作に取り組むのは、ひょんなことがきっかけだった。ある日、会社からの帰りの電車で、同じコナミに勤めている後輩といっしょになった時のこと。彼は『メタルギア』のファンであり、小島監督に自身による続編を熱望したのだ。その熱い想いに驚いた小島監督は、その日のうちに続編のストーリーを書きあげ、新しい企画として会社に提出した。『メタルギア2』は本来、生まれることのなかったストーリーだったのだ。
 『メタルギア』の登場人物たちが時代と政治に翻弄され、敵として登場するというストーリー。石油を精製する細菌の発明のようにSF色が強い設定など、続編ということもあり、かなり変化球な設定となっている。
 技術的にも、当時のMSX2の限界に挑戦している。本来ならばデータ転送が早いROMカートリッジを記憶媒体に使っているにもかかわらず、ロード時間(圧縮したデータを解凍する時間が必要)が必要なほどデータを詰め込んでいるうえに、音源チップを積み、高解像度モードで描画している完全燃焼の一本なのだ。
 本作を最後にコナミはMSX2のゲーム作りから撤退をする。偶然から生まれた本作は、コナミのMSX2担当者たちの総力戦の最後の舞台となったのだ。

「OILIX(オイリックス)」という技術の進歩

 「石油」は人類の生命線だ。石油(原油)を精製して生まれるLPガス、ガソリンや灯油、軽油、ナフサなどは最も効率が良い(コストが安い)エネルギー源と言われ、発電をはじめ、生活の隅々にまで用いられている。だが、石油が地中に埋蔵されている量には限界があると言われている。20世紀には石油の可採年数と枯渇年数がたびたび話題になり、来るべきエネルギー危機がささやかれていた。
 本作『メタルギア2』では、石油の概念を根本からかえる、単細胞藻類OILIX(オイリックス)の発明が描かれている。このOILIXを精製することで、高純度な石油が作られるというのだ。
このOILIXという技術はあながちフィクションではない。現実においても、すでに光合成によって石油の代替エネルギーを作り出す単細胞藻類がいくつか発見されている。たとえば「ボツリオコッカス」や「オーランチオキトリウム」と呼ばれる藻類からは油脂を生産することができるといわれている。また、サトウキビやトウモロコシからはエタノールが採取できるという。これらの植物類からエネルギーを生成する技術は「バイオマス(生物資源)」と呼ばれ、次世代の産業として注目を浴びている。大学やベンチャー産業を中心に石油の代替エネルギーとして研究が進められているところだ。アメリカのサンディエゴ近辺で大規模のバイオマスプラントの建設が進められているなど、いくつかのニュースが市場を騒がし始めている。しかし、残念ながら現在のバイオマス技術で生成される、バイオディーゼルやバイオエタノールには不純物が多く含まれるうえに生産コストがとてつもなく高価になるとされている。石油が現在のように主流のエネルギーになって300年が経っている。一方、バイオマス技術が研究されはじめてまだ数十年。実際にゲーム中のOILIXのように世界を震撼させるほどの発明になるには、まだまだブレイクスルーが必要とされているようだ。
 1960年代にジェームズ・ラヴロックが提唱した「ガイア説」によると地球の大気、水系、土壌、表層地殻は循環しており、ひとつの巨大な生物のような生命圏(バイオスフィア)を作りあげていると言う。気温、海洋塩分濃度、大気ガス組成などを自己調節・維持しているのだと。その地球という巨大な生命体において、きわめて大きな面積を占めている存在がバクテリアと海洋藻類の生態系である。巨大な生命体である地球の表層に住む、ちっぽけな人間の運命を左右するのは、さらにちっぽけな50ミクロンの大きさの細菌類ということになるのかもしれない。