身近なトレーニング器具として挙げられるダンベル。
しかし、せっかくダンベルトレーニングを行っても、その効果や適切な方法を知らなければ、けがの原因になってしまうことも。
そうならないために、ここではダンベルを使った適切な筋トレの方法を詳しく解説します。
目次
筋トレ効果を高める「超回復」とは
トレーニングを行うと筋肉が疲労し、その能力が低下します。これが回復しないうちにトレーニングを重ねると、さらに疲労が蓄積してしまい、トレーニング効果を得られません。
場合によっては、けがの原因になってしまいます。そのため、トレーニング後は休養する時間を設けることで、筋肉を回復させることが必要です。
しっかり回復させることで筋力はレベルアップを遂げます。これを「超回復」と呼びます。
超回復を経ることで、筋肉に同じ負荷がかかっても対応できるようになるのです。しかし、超回復によってレベルアップしても、トレーニングを怠れば筋力は戻ってしまいます。
筋力アップおよび維持するためには、継続的なトレーニングが欠かせません。なお、超回復は大きな筋肉で約48~72時間で最大になると言われています。そのため、この時間を目安に次のトレーニングを行えば、着実な筋力アップを目指せるでしょう。
トレーニングの組み方
トレーニングはやみくもに取り組んでも、大きな効果が期待できません。
特に「リズム」「セット数」「インターバル」を意識して、計画的に行いましょう。ここでは、各要素について解説します。
リズム
筋トレには適したリズムがあります。これに従って行うことで、より大きな効果が期待できるでしょう。
例えば「アームカール」「サイドレイズ」などで使われる「~カール」「~レイズ」といった円を描く運動では、以下のようなリズムで実践することが大切です。
- 1~2秒でウエイトを上げる
- 上げきったところで1秒間キープする
- 3~4秒かけて下ろす
- 下ろしたところで休まず、すぐ次の上げる動作に入る
これに対して「ショルダープレス」など「~プレス」と呼ばれる直線的動作のトレーニングでは、上げきった(もしくは伸ばしきった)時点でのキープは避けてください。
関節がロックされてしまうことが多く、効果が半減してしまいます。また、けがなどの要因にもなりかねません。
セット数
より大きな効果を狙うため、セット数を増やそうと考える方は多いと思います。しかし、むやみにセット数を増やすのは避けましょう。ただし1セットのみ場合は、負荷が少なくなったり、負荷が極端に高くなったりしてしまい、けがの恐れがあります。
3セットを基準に重さや回数で調整してみてください。逆にセット数を重ねられるということは、それだけ1セットあたりの負荷が軽い可能性があります。
セット数を増やし過ぎて長くトレーニングしても、集中力が低下して強度が上げられず、結果的に十分な刺激を筋肉に与えられないかもしれません。
これでは本末転倒ですので、セット数を過度に増やすより「しっかり負荷をかける」ことを念頭に置いて取り組んでください。
インターバル
インターバルは疲労した筋肉を回復させ、次のセットに備えるための時間です。例えば乳酸などの疲労物質を除去するのも、インターバルの目的となります。この時に最大の負荷を与えるならば、しっかり休んで完全に疲労物質が除去されるのを待った方が良いでしょう。
しかし、乳酸の蓄積はホルモン分泌の促進につながるともいわれ、これを優先するならば休み過ぎは良くありません。
目的によっても変わりますが一般的には、背中や胸、脚などの部位なら1~2分、腕や腹部などなら30秒~1分を目安に始めて、インターバルを調整してみると良いでしょう。
背中・胸・力こぶを鍛えるメリット
背中や胸、力こぶを鍛えると、どのような効果が期待できるのか。ここで具体的なメリットを4つ取り上げて解説します。
姿勢改善
背筋の伸びた姿勢を獲得・維持するには、背中の筋肉がとても重要です。筋力が弱いと姿勢を維持できず、背中が丸まるなど姿勢の崩れにつながるでしょう。
基礎代謝量アップ
筋肉量が増えれば基礎代謝量が増えます。その結果、ダイエット効果も期待できるでしょう。
特に筋肉量の多い部位を鍛えることで基礎代謝量の増加につながりやすくなります。また、さらに基礎代謝量アップを目指すなら、背中も合わせて鍛えることがおすすめです。
肩こり、腰痛の予防に期待
前述の通り、背中の筋力が弱いと正しい姿勢を維持できません。その結果、肩や腰などへの負担が増えてしまい、肩こりや腰痛の原因になる可能性があります。
背中を鍛えることは、肩こりや腰痛の予防につながるでしょう。
くびれのあるスタイル作り
背中を鍛えると、くびれのある美しい逆三角形のスタイルが獲得できます。
また、背中にある広背筋を鍛えると、大きくたくましい上半身が作り上げられていくでしょう。これに加えて、緩みがちな力こぶも鍛えれば、外見から健康的な印象を与えられるようになります。
ダンベルを使った背中・胸・力こぶの筋トレメニュー
それでは、実際にダンベルを用いて、背中や胸、力こぶを鍛える筋トレメニューをご紹介します。
部位別に手順やポイントを解説しますので、1つずつ確認しながら取り組んでみてください。
「背中」のトレーニング
背中は、自分では見えにくい部分であり、一人でトレーニングを行うことが難しい部位です。
ダンベルのような器具を用いたり、あるいはマシンを活用したりすることで効率的に鍛えましょう。
ダンベルデッドリフト(僧帽筋、広背筋、脊柱起立筋、大臀筋、ハムストリング)
背中とともに、お尻や太ももなど下半身の筋肉も鍛えられるトレーニングです。適した重さは筋力によりますが、最初は体重の半分(体重60kgなら30kgのダンベル)を目安にしてみてください。
1セットあたり15~20回、インターバルをはさみながら2~3セット行います。
- 手順
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- ダンベルを2つ、床に肩幅の位置で置く
- 脚を肩幅程度に広げて、ダンベルの後ろに立つ
- 背筋を伸ばしたまま、ヒザを曲げていく
- 腕を伸ばした状態で、左右それぞれの手にダンベルを持つ
- 胸を張り、背中から引き上げる意識でダンベルを持ち上げる
- まっすぐな姿勢になるまで持ち上げたら、この動作を繰り返す
- ポイント
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- ヒザを曲げたとき、つま先より前に出ないよう、お尻を後ろへ引くように意識する
- 視線を前に向けて、背中はまっすぐな状態を保つ
- 腕の力ではなく背中の筋肉を使って持ち上げる
ワンハンドローイング(背中)
背中全体、そして肩の後ろの筋肉にも刺激を与えられるトレーニングです。ベンチを用いて行いますが、安定して身体を支えられれば、イスなどで代用しても構いません。
- 手順
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- ベンチの横に1つダンベルを置く
- 脚を肩幅に開き、ベンチの横に立ちます
- 片手(手のひら)と片脚(ヒザ下)をベンチに乗せる
- ベンチに乗せていない手を伸ばし、ダンベルを持つ
- ヒジを曲げながらダンベルを引き上げる
- ヒジを元の状態に戻しながらダンベルを下げ、これを繰り返す
- 反対側でも同様の動作を行う
- ポイント
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- 視線は下ではなく、少し前方に向ける
- 首から腰までをまっすぐに維持する
- 身体がグラつかないようにする
- 腕だけではなく、背中(肩甲骨)を動かしてダンベルを引き上げる
- 力んでダンベルを強く握り過ぎない
ダンベルショルダープレス(三角筋、上腕三頭筋、僧帽筋)
肩から背中にかけた筋肉を鍛えられるトレーニングです。できればわずかにカラダが後ろに傾けられるように、角度のあるイスやベンチに座って行ってください。
- 手順
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- 左右それぞれの手にダンベルを持ち、ベンチに座る
- ダンベルを脚の力も使って耳の横に来るように持ち上げる
- 床に対して垂直になるように、ヒジを伸ばしてダンベルを持ち上げる
- ゆっくりと耳の横までダンベルを下ろす
- 3~4を繰り返す
- ポイント
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- 前腕を床に対して常に垂直に保つ
- ダンベルを下まで下ろし過ぎないようにする
- 腰を反らないように気をつける
マシンを使ったトレーニング
ジムにあるマシンを用いれば、より効果的に背中を鍛えることができます。ロウイングマシンやショルダープレスのマシンを使用すると感覚がつかめやすくなります。
具体的にはラットプルダウンやシーテッドロウ、チンニングなどが代表的です。
ラットプルダウンは座った状態から腕を伸ばし、頭上に設けられたグリップを引くことで負荷をかけます。これに対し、シーテッドロウも同様に座って使用しますが、上ではなく前方にあるグリップを引くことで鍛えるマシンです。
チンニングはいわゆる懸垂ですが、チューブを使用することで動作をサポート(持ち上げる重量が軽くなる)してくれるため、初めての場合でも行いやすくなります。
「胸」のトレーニング
続いて、胸を鍛えるトレーニングをご紹介します。ここではダンベルを用いたトレーニングと、ジムのマシンを用いたトレーニングの両方を取り上げます。
ダンベルプレス(大胸筋・三角筋・上腕三頭筋)
ベンチなどに寝転んだ姿勢で行うトレーニングです。ダンベルプレスは手首にかかる負荷がかかるため、リストラップ等のツールを使うなど、手首の負担を軽くする方法もあります。
- 手順
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- ダンベルを握り、太ももの上に乗せた状態で、ベンチに座る
- 仰向けになりながら、脚の力も使いダンベルを持ち上げる
- 頭・両肩・お尻をベンチにつけ両脚にも力を入れて体勢を整える
- 胸を張ったまま、ダンベルをゆっくり下ろす
- 姿勢を保ったまま、まっすぐ上に持ち上げる
- 4~5を繰り返す
- ダンベルを脚の力も使い、最初に構えたセットポジションまで戻す
- ポイント
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- ベンチは脚がしっかり地面を踏みこめる高さにセッティングする
- 肩を下ろし、肩をすくめないように気をつける
- 前腕は床に対して常に垂直を保つ
- ダンベルの可動域を広くするが、ヒジが伸びきる手前までにする
チェストプレス(大胸筋、三角筋:前部、上腕三頭筋)
ジムでは「チェストプレス」のマシンを使うことで、座った状態から胸の筋肉を鍛えることができます。自身の筋力に合った重量で調整し、取り組んでみてください。
- 手順
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- 体型や筋力に応じて、シートの高さと重量を調整する
- シートに座り、目の前にあるバーを左右それぞれの手で握る
- 胸を張りながら、両手でバーを押し出す
- しっかり押し出したら、再び元の姿勢に戻す
- この動作を繰り返す
- ポイント
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- バーを押し出したときに、ヒジが伸びきる手前までにする
- 胸を張った状態を維持して、背中を丸めない
- シートは胸のトップとグリップが同じ位置になるよう調整する
- 前腕はグリップと水平にする
「力こぶ」のトレーニング
最後に、力こぶを鍛えるトレーニングをご紹介しましょう。ダンベルを用いるほか、ジムではぜひマシンを使ってトレーニングしてみてください。
アームカール(上腕二頭筋)
アームカールは、力こぶの表面にある上腕二頭筋を鍛えるトレーニングです。片側あたり15~20回、2~3セットを目安に行いましょう。
- 手順
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- 手のひらが正面に向くようにダンベルを両手に持ち、腕を下ろした姿勢になる
- 両方のヒジをゆっくり曲げダンベルを持ち上げる
- ゆっくり1の姿勢に戻し、反対側も同じように行う
- これを交互に繰り返す
- ポイント
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- 勢いをつけずに、丁寧に行う
- 上体が後ろに反らないように反復する
- ダンベルを持ち上げるとき、腕を後ろに引かないようにする
- ヒジの位置が変わらないように行う
シッティングリアレイズ(三角筋後部、僧帽筋)
二の腕を鍛えながら、背中の筋肉にも刺激を入れられるトレーニングです。なお、ラテラルリアレイズと呼ばれることもあります。15回程度を目安に行いましょう。
- 手順
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- ダンベルの外側を握って、腰かける
- 上半身を倒して、胸と太ももをつける
- 小指を上に向けたまま、ダンベルをつける
- ゆっくりと元の位置に戻す
- 3~4を繰り返す
- ポイント
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- 肩を支点に行う
- 身体を起こさないように行う
- ヒジを曲げ伸ばしせずに行う
ケーブルプレスダウン(広背筋・大円筋)
ケーブルマシンを用いて、背中を鍛えるトレーニングです。
- 手順
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- 脚を肩幅程度に開き、軽く腰を落とした状態でケーブルマシンの前に立つ
- 両腕を伸ばした状態で、両手でバーを握る
- 腕を伸ばしたまま、バーをカラダに近づける
- ヒジを伸ばしたまま、元の位置に戻す
- 3~4を繰り返す
- ポイント
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- ヒジを曲げ伸ばしせず、腕を一直線に保つ
- 脇を締めるようにバーを引き寄せる
- 開始の姿勢を保ったまま行う
極端な過負荷のトレーニングに注意
筋肉は使わなければ小さくなります。そのため、筋肉の状態を維持・向上させるにはトレーニングが必要ですが、過度のトレーニングはかえってけがの原因になりかねません。この点については、十分に理解しておいてください。
また、目的によって適した負荷のレベルが異なります。筋肥大やボディメイクなどには、8~12回程度反復できる負荷でのトレーニングがおすすめです。これに対してシェイプアップ効果を求めるなら、15~20回程度反復できる負荷を目安に行ってください。
なお、トレーニングを行っていると筋肉痛などが生じるかもしれません。その際は無理にトレーニングを行わず、痛みがなくなるまで筋肉を休ませてあげることが大切です。
まとめ
姿勢維持や肩こり・腰痛予防、あるいは魅せるカラダ作りなどには、背中・胸・力こぶを鍛えるのがおすすめです。ここではその効果とともに、具体的なトレーニング方法をご紹介しました。
ダンベルトレーニングはもちろん、ジムではマシンを使用することで、より効果的に筋肉へ刺激を入れることができます。
ぜひ背中や胸、力こぶのトレーニングを実践し、理想のカラダを手に入れましょう。