伝え続けたい技術の大切さ
vol.100 | 2021/7
日頃のスクール運営にご理解とご協力をいただきありがとうございます。
今回でこのコラムも100回となります。
100回目ということで改めて技術を身に付けることの大切さについてお伝えしたいと思います。
■はじめに
私は14年前に子どもたちの指導に携わる際、まず、何を伝えたいのかということを考えてみました。
これまで私自身が学んできたこと、経験したことなどに考えを巡らし、「目の前の結果だけに捉われずに、子どもたちの将来に繋がる指導をしていきたい」と強く思い、自分自身のサッカー指導におけるコンセプトとしました。
指導コンセプトをこのように決めた理由として、まず、多くの指導者が『個が大切』、『個を育てる』ということをよく言っていますが、実際には、目の前の結果に拘り、試合に勝つことに重点をおいていることが多く、普段行っている練習も、戦術練習やパス練習に多くの時間を費やし、『個を育てる』ための技術練習などには、あまり時間をかけていないという現実を見ていたからです。
『個を育てる』ため、確かな技術を身に付けるには、ただひたすらに繰り返しの練習が必要で、徹底的にドリブル、リフティングを練習しなくては、ボールを自由自在に扱える技術は身に付きません。
だから、私は、目の前の結果に拘るのではなく、子どもたちが、将来サッカーを楽しめるようになるためには、今、何が必要かを考えた結果、ボールを自由自在に扱うための技術練習にしっかりと時間をかけた指導に拘わりたいと考え、自身のサッカー指導におけるコンセプトを決めました。
■個人技術とは
身長が高い人や低い人、足が速い人や遅い人、力が強い人や弱い人、運動能力には個人差があります。成長の度合いが大きく異なる年代は、サッカーの場面で、その差がより顕著に出てくるでしょう。しかし、本当にその時、その場面での結果がすべてなのでしょうか。その時の運動能力だけがすべてでしょうか。これから先の結果は変わらないのでしょうか。
サッカーはボールを足で扱うスポーツですから、一番大切なのは「どれだけボールを上手く扱えるか」という技術に対して、どれだけ、子どもたちが、時間をかけ繰り返す取り組みができたのかということが重要で、目の前の結果ではないのです。
技術やテクニックは神経系の発達が著しいと言われる小・中学生年代の方が身に付きやすいです。
勘違いしないでほしいのですが、スピードやパワーを否定しているわけでは決してありません。持っている力を最大限に引き出すためにも、基本となる技術やテクニックがあってこそ初めて運動能力が生きるという話です。技術練習は、何度も繰り返しながら確かな技術へと積み上げていくものです。時には、飽きてしまうこともあるかもしれません。それでも、ボールを自由自在に扱う技術を身に付けるには毎日の積み重ねや繰り返しが一番の近道なのです。
特別なことをするのではありません。大切なのは、自ら意識して、とにかく、毎日ボールに触ることです。毎日、ボールに触ることで、技術は必ず上達します。とにかく、あせらずに毎日、ボールに触れて練習を積み重ねていきましょう。
■試合の勝ち負けより大切なこと
試合の時、皆さんはどれくらい勝ち負けを気にしていますか? もちろん試合に勝つことは大切です。しかし考えてほしいのは、ただ単に勝つということではなく、これまで練習したことを、実際の試合でどれだけ試すかだと考えています。失敗は何回してもOKです。失敗したことを褒めていますか。チャレンジしたことを褒めていますか。チャレンジして初めて今の自分に足りないことが分かり、その後の練習に結びつけられますし、反対に成功したチャレンジは自信を持ってモノにして得意なプレーにしていきましょう。
得意なプレーが見つかったら、そればかりにこだわるのではなく、相手とのかけ引きに勝つためにも、相手に読まれないフェイントやアイデアを磨きましょう。フェイントやアイデアは多ければ多いほど有利になりますから、基本技術の上乗せとして非常に大切なポイントです。得意なプレーを武器として生かすために、自分なりに工夫してみてください。自分の考えを試し、自分の得意を増やしていくことは、自分にしかできません。
保護者の皆様、お子さんの試合を観戦する機会があるでしょう。その際は、結果ではなく、お子さんがどんなプレーをしたのか、またはしようとしたのか見てあげてください。仮に試合で負けてしまっても、ドリブルをしようと意識的にチャレンジし、周囲をしっかりと見てパスを出していたら褒めてあげてほしいですし、一方で何も考えずにボールを蹴っているだけなら、練習したプレーを試すように声掛けをしてほしいと思います。結果ではなく、そこに至るまでの取り組み(頑張り)をよく見てほしいです。
長いスパンで考えれば現在のレベルは大きな問題ではありません。技術練習を今やらなければ、将来はライバルに追い抜かれてしまいます。どんなメンバーとチームメイトになっても、どんな対戦相手でも、しっかりと自分のプレーができるように練習していきましょう。自分が他の誰よりも1番チャレンジできたと試合後に振り返られることが大切です。
『今日のプレーはどうだった?』と問いかけてみるのもよいかもしれません。
■まとめ
試合では、子どもたちも、保護者も、指導者も「勝ちたいという気持ち」が先行してしまいがちです。勿論、勝つという結果は非常に重要ですし、それが自信にもなると思います。
ただ、勝ちという結果だけ見れば、確かに良いのかもしれませんが、それ以上に、「実際、その試合で、子どもたちがどんなプレーをしていたのか?」ということが、私は一番重要だと考えています。試合には勝っても、ただボールを蹴ってばかりで、ドリブルを全くせずに、パスばかりでは、個人の技術は身に付きません。何よりも、結果ではなくどのようなプレーができたか、個人としての取り組み(個人技)です。
人は年齢とともに、パワーやスピードはある程度、練習をすることで身に付いてきます。
しかし、個人技は、年齢とともに身に付きにくくなっていくものです。
だからこそ、子どもたちに、今、必要なことは、目の前の結果(勝利)ではなく、目の前の技術練習なのです。
今、まさに練習している技術は、中学生・高校生になって結果として表れてきます。
コナミスポーツクラブのサッカースクールは、結果ではなく技術習得です。
時間のかかる指導を、繰り返し伝えながら、サッカーを通じて何事にも自分の考えを持ち取り組むことの大切さを子どもたちに伝え続けます。
技術を身に付けるには時間がかかりますが、子どもたちの将来のためには、今、しっかりと練習しておくことが本当に重要です。
今、試合で勝てなくてもいい、試合に勝つだけのために監督の指示通りのロボットになってはいけない、今は自分自身の技術を磨け、試合では相手とぶつかり、相手を抜き、自分のアイデアを持って何回もチャレンジしろ。といったことが、子どもたちにとって本当に大切なことだと思っています。
子どもたちの指導者として、自身の指導コンセプトのもと、子どもたちの可能性を最大限に広げられるように、今後も勉強を重ねながら指導に携わっていきたいと思います。
プロフィール
大石 鉄也
1979年11月26日生まれ。静岡学園高等学校から川崎フロンターレ入団。(在籍8年)川崎フロンターレ在籍時代に1年間、ブラジルグレミオに留学。2004年に現役を引退。現在は、子どもたちへの指導を行いつつサッカースクールカリキュラム開発及び指導者の育成にあたる。