コナミスポーツマスターインストラクター大石鉄也のサッカーコラム SOCCER COLUMN by Tetsuya Oishi

第99回全国高校サッカー選手権大会を観て感じたこと

vol.95 | 2021/2

日頃のスクール運営において、新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みに、ご理解とご協力をいただきありがとうございます。
手洗い、うがいをこまめに行い、体調管理には十分に注意しましょう。

今月は、熱戦が繰り広げられた全国高校サッカー選手権のお話をしたいと思います。

■新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う活動

まず、今回の選手権は、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い、準決勝・決勝は無観客での開催となり、応援団、保護者、関係者など現地で観戦ができなかったことは非常に残念だったと思います。
何よりも、この1年間、さまざまな制限の中で、思ったように部活動ができず、非常に悔しく辛い思いをしながらの活動であったと思います。思ったように満足いく練習ができなかったチームが多い中でも全国高校サッカー選手権が開催できたことは本当に良かったと思います。


■目立ったフィジカルの強さ

今回の選手権は、フィジカルの強さが目立ったように感じました。
コロナ禍において思うように練習(ボールコントロール・ボールポゼッションなど)ができなかったため、技術や連携の能力が高いチームにとっては、勝ち上がることが難しかったのかもしれません。
守備に重点を置き、攻撃はシンプルに相手エリアに向けてボールを蹴る速攻型の戦術チームが多かった印象です。また、空中戦や球際などにおけるフィジカルの強さも同時に目立っていました。典型的なプレーを例に挙げると、ロングスローをするチームが非常に多く、そのロングスローから数多くの得点がうまれました。
ロングスローを飛ばす筋力であったり、空中戦を制す筋力であったり高校生離れしたフィジカルを持つ選手が多かったと感じました。


■技術があってのフィジカル

今回の選手権は、フィジカルが強いチームが目立ったお話をしましたが、正直、私は試合を観ていて、プレーに対するワクワク感を感じることができませんでした。
ボールを失うリスクを減らし、相手のエリアに向けて大きく前にボールを蹴り出すようなロングボールを多用する試合展開にワクワク感はありませんでした。
やはり、個人技術を発揮し連携するプレー、相手との駆け引きにおいて、相手の裏をかくような予測できないプレー、すなわちアイデアやイマジネーション溢れるプレーの連携が、観ている人をワクワクさせ、感動を与えてくれると私は感じます。
決して、ロングスローを否定しているわけではありませんが、ロングスローからのゴールシーンよりも、ドリブルやパスの多様な組み合わせで相手守備を翻弄してのゴールシーンをもっとたくさん観たかったと思いました。
やはり、サッカーとはボールを扱うスポーツですので、止める、運ぶ、蹴るといった技術を高いレベルで発揮してプレーすることがサッカーの1番重要なポイントだと思います。高い技術レベルがあってこそ、はじめてフィジカルの強さが活かせると思います。
いくらフィジカルが強くても、止める、運ぶ、蹴るといった技術が身についていなければ、本当の意味で試合において活躍することは難しいと思います。
フィジカルが強いに越したことはありませんが、フィジカルでサッカーをやるわけではありません。高い技術レベルがサッカーには1番必要なのです。
では、ボールを扱う技術が高い選手は、なにがどのように違うのでしょうか。高い技術が身についている選手は、しっかりとボールを扱うこと、すなわち、止める、運ぶ、かわす、いなす、つなぐといったプレーで、対峙する相手選手と駆け引きし、相手のバランスを崩し、相手の裏をかき、相手を引き寄せることで、さまざまな場面で相手に対して数的優位な状況をつくり出すことができるようになります。
 サッカーにおいて、止める、運ぶ、蹴るという技術がなければ、試合の流れの中で相手を崩すことはできず、得点するチャンスをつくりだす回数は少なくなります。
もちろん、セットプレーでチャンスをつくることはできますが、セットプレーばかりに頼ったサッカースタイルでは、これからのサッカーにおいては、やはり勝利を得続けることは難しくなっていくと感じています。


■育成に必要な要素

私は、高校生も育成段階だと思っています。
「勝利を得ること」と「選手の個性を最大限に伸ばすこと」をバランス良く指導することがとても大切だと思っています。現実的には非常に難しいチャレンジであるかもしれません。
それでも、リスクを負わない手堅いサッカーではなく、選手の個性を最大限に発揮させて、常に工夫しながら試合を組み立て、結果的にチーム力のアップにつなげていくことが大切だと思います。

今回の選手権で、私の印象に残ったチームは、新潟県代表の帝京長岡高校と埼玉県代表の昌平高校です。
彼らのプレースタイルは、ただやみくもに相手の陣地にボールを蹴りだすようなことはせず、空中にボールがポンポン飛んでいることが少なく、常に、足元でボールを大切にして、ポジションに捉われず全員がボールを繋ぐ、運ぶことに繰り返しチャレンジするスタイルでした。
チームの特徴はもちろん、選手個々の特徴(アイデア、イマジネーション)もしっかりと発揮できていて、選手が非常に成長できる環境だと感じました。

指導者の役割は、選手を指導者の型にはめることではありません。選手の性格、特徴、ストロングポイントを理解した上で自由にプレーさせ、ポジションやその役割を限定し過ぎないことが重要だと私は思っています。
流動的にポジションチェンジし、選手が個々のアイデアで局面を打開できるようにするためには、普段の練習からチャレンジさせることが大切です。
相手にとってプレーの読めない選手が多ければ多いほど、相手の守備は苦戦します。
裏を返せば、ワンパターンの攻撃は相手からすれば非常に守りやすいのです。
育成段階の高校生を預かる指導者には、「目の前の勝利」をつかむために、選手の特徴を消してしまうようなサッカーを指導するのではなく、選手の特徴やアイデアを最大限に引き出し、それを活かすことのできるスタイルを作り上げていただきたいと思います。

もし、選手個々の成長と一緒に、勝つ喜びや負ける悔しさをしっかりと伝えられる指導者が増えれば、高校サッカーからより多くのプロ選手が生まれるだろうと思います。


コナミスポーツクラブサッカースクールでも、育成ということを指導者は常に意識し、ボールを扱う技術レベルを高めるために、日々、技術指導に拘りを持って指導し、技術が身につくことでサッカーがもっと楽しくなることを実感してもらうようにします。
そして、常にチャレンジする環境を子どもたちに提供し、子供たちの成長に繋げていきます。

プロフィール

大石 鉄也

1979年11月26日生まれ。静岡学園高等学校から川崎フロンターレ入団。(在籍8年)川崎フロンターレ在籍時代に1年間、ブラジルグレミオに留学。2004年に現役を引退。現在は、子どもたちへの指導を行いつつサッカースクールカリキュラム開発及び指導者の育成にあたる。