コナミスポーツマスターインストラクター大石鉄也のサッカーコラム SOCCER COLUMN by Tetsuya Oishi

第97回全国高校サッカー選手権大会を観て感じたこと

vol.71 | 2019/02

今月は、1月に開催された全国高校サッカー選手権のお話をしたいと思います。
私はテレビで試合を観戦しましたが、各校ごとに特徴があり育成指導をしていくうえで非常に勉強になりました。

まずは、私の率直な意見として、今回の選手権を観戦して感じたことをお話させていただきます。

選手権は、トーナメント形式で開催されるため、目の前の試合に勝つことが出来なければ次の試合に進むことはかないません。確実に勝利を積み重ねていくために、あまりリスクを負わず、手堅いサッカーをしている高校が多かったように感じました。
手堅いサッカーとは、簡単に言うと、守備に重点を置き、カウンターを仕掛けるサッカーということです。
そうすると、選手のポジションは固定され、ポジションごとに役割を徹底し、いつもカウンターを狙っているため、大きく前にボールをけり出すロングボールが多くなり、プレーの中でアイデアやイマジネーションは活かされないといった印象を受けました。
例えば、攻撃の場面でドリブルやパスを工夫して、どのように相手の守りを崩しながら相手の陣地に向かって攻めていくのかを選手たち一人ひとりがアイデアやイマジネーションを働かせてプレーすることが出来るような状況でも、途中で相手にボールを奪われるといったリスクを負わないために、相手の陣地へ無駄に大きくボールを蹴ってしまう。
ただ、ボールを大きく前に蹴ることであれば、誰にでも出来ます。しかし、そのようなプレーを繰り返すことが選手のためになるのだろうかと私は少し疑問に思いました。
もちろん、勝ち進まなければならないうえでの戦術の一つだとは思いますが、私は、高校生までは育成段階だと思っています。
「勝利を得ること」と「選手の個性を最大限に伸ばすこと」をバランス良く指導することがとても大切だと思っています。現実的には非常に難しいチャレンジであるかもしれません。
それでも、手堅いサッカーではなく、選手の個性を最大限に発揮させて、常に工夫しながら試合を組み立て、結果的にチーム力のアップにつなげていくことが大切だと思います。

今回の選手権で、私の印象に残ったチームは、福島県代表の尚志高校です。
彼らのプレーは、ただやみくもに相手の陣地にボールを蹴りだすようなことをしないので、空中にボールがポンポン飛んでいることが少なく、常に、足元でボールを大切にして、ポジションに捉われずに全員がボールを繋ぐ・運ぶことに繰り返しチャレンジするプレースタイルでした。
準決勝で惜しくも負けてしまいましたが、チームの特徴はもちろん、選手個々の特徴(アイデア、イマジネーション)もしっかりと発揮できていて、選手が非常に成長できる環境だと感じました。

指導者の役割は、選手を指導者の型にはめることではありません。選手の性格、特徴、ストロングポイントを理解した上で自由にプレーさせ、ポジションやその役割を限定し過ぎないことが重要だと私は思っています。
流動的にポジションチェンジし、選手が個々のアイデアで局面を打開できるようにするためには、普段の練習からチャレンジさせることが大切です。
相手にとってプレーの読めない選手が多ければ多いほど、相手の守備は苦戦します。
裏を返せば、ワンパターンの攻撃は相手からすれば非常に守りやすいのです。
育成段階の高校生を預かる指導者には、「目の前の勝利」をつかむために、選手の特徴を消してしまうようなサッカーを指導するのではなく、選手の特徴やアイデアを最大限に引き出し、それを活かすことの出来るスタイルを作り上げていただきたいと思います。

もし、選手個々の成長と一緒に、勝つ喜びや負ける悔しさをしっかりと伝えられる指導者が増えれば、高校サッカーからより多くのプロ選手が生まれるだろうと思います。

高校生たちが頂点を目指し、最後まで勝利をつかむことを諦めない姿勢や、勝敗によって得られる感動や悔しさは高校サッカー選手権の醍醐味だと思います。今回、選手権決勝戦の観客数は54,194名とJリーグを大きく上回る動員数となり、注目度が非常に高いことがうかがえます。チャレンジすることを忘れずに、さらに高い技術レベルを持った高校が増え、お互いが切磋琢磨しながら技術を高めあうことが出来るようになれば、日本サッカーの将来がもっと明るく楽しみになってくると思います。これからも、チャレンジする技術を育てるサッカー指導を磨いていきたいと思います。

プロフィール

大石 鉄也

1979年11月26日生まれ。静岡学園高等学校から川崎フロンターレ入団。(在籍8年)川崎フロンターレ在籍時代に1年間、ブラジルグレミオに留学。2004年に現役を引退。現在は、子どもたちへの指導を行いつつサッカースクールカリキュラム開発及び指導者の育成にあたる。