コナミスポーツマスターインストラクター大石鉄也のサッカーコラム SOCCER COLUMN by Tetsuya Oishi

高校時代の恩師(井田監督)の印象に残った一言

vol.56 | 2017/11

11月に入り気温もだいぶ下がり過ごしやすい季節になりました。
風邪をひきやすい季節になってきますので、手洗い、うがいをこまめに行い、
体調管理には十分に注意しましょう。

今月は、私の高校時代の恩師である井田勝通氏(元静岡学園監督)が、小学生を対象としたサッカークリニックを開催した時のお言葉で、非常に印象に残ったものがありましたので、紹介させていただきます。

その印象に残ったお言葉は『勝利は一瞬、成長するのは一生だ』です。
この一言には、育成段階の子供たちに向けて、非常に深い意味が込められていると私は感じました。

ほとんどの指導者・子ども・保護者は、勝利という目の前の結果だけを求めることが多く、
勝ち負けの結果だけですべてを評価してしまいがちです。

そうすると・・・

指導者は、子どもたちの個人の成長よりもチームの勝利に重点をおき、チーム戦術・システム(動き方)練習を中心に行うため、チームとしては強化されますが、個々の技術・思考力は身につきにくいといったことに繋がります。

子どもは、コーチの指示通りに失敗しないように慎重にプレーしようとして、自分のアイデアで思い切りチャレンジすることが出来なく、コーチのロボット状態になってしまいがちです。自ら考えてプレーすることができなくなりプレーの幅が狭い選手となってしまいます。

保護者は、勝利という結果だけが先行し、応援に熱が入りすぎ、子どものチャレンジしている勇気などに目が届かずに、試合中や試合後に子どもに対して過剰なアドバイスをしてしまい、子どもに余計なプレッシャーをかけてしまうことになりがちです。子どもは、ストレスを感じ本来のサッカーの楽しさが薄れてしまいます。

子どもたちの成長過程において目の前の勝利よりも、もっと大切なものがあると私は思っています。子どもたちが成長していくためには、日々たくさんボールに触り自らが努力することが1番重要です。
その中で試合では、日々練習したことをどれだけ試せるかが重要になります。
試合中の失敗は何回してもOKです。チャレンジして初めて今の自分に足りないことが分かり、その後の練習に結びつきます。反対に成功したチャレンジは自信につながります。
ところが、勝ち負けの結果に縛られてしまうと、子どもたちは失敗をしないようにプレーしチャレンジ精神を失ってしまうことになります。

保護者の方々は、試合や練習に応援に行く際には、お子様がどんなプレーをしたのか、またはしようとしたのかをしっかりと見てあげてください。仮に試合で負けてしまっても、積極的にドリブルをしようとチャレンジしていたり、周囲をしっかりと見てパスを出していたり、失敗を恐れずにプレーし、チャレンジしている姿をしっかりと褒めてあげてほしいと思います。

長いスパンで考えればお子様の目の前の試合における勝ち負けは気にしなくてもいいと思っています。
とにかく日々努力し、失敗を恐れずにチャレンジし続けることが成長につながります。
どんなメンバーでも、どんなチームでも、どんな対戦相手でも、しっかりと自分のプレーができるように練習していきましょう。自分が他の誰よりも1番チャレンジできた、1番ドリブルでかわしていた、などプレー内容を試合後に振り返えることが勝ち負けの結果よりも大切だと思っています。

指導者・子ども・保護者とそれぞれ立場は違いますが、長い目で日々努力とチャレンジをしていくことが育成段階では大切になりますので、子どもが努力できる・チャレンジできる環境を指導者・保護者は作り出し長い目で見守ってほしいと思います。

プロフィール

大石 鉄也

1979年11月26日生まれ。静岡学園高等学校から川崎フロンターレ入団。(在籍8年)川崎フロンターレ在籍時代に1年間、ブラジルグレミオに留学。2004年に現役を引退。現在は、子どもたちへの指導を行いつつサッカースクールカリキュラム開発及び指導者の育成にあたる。