コナミスポーツマスターインストラクター大石鉄也のサッカーコラム SOCCER COLUMN by Tetsuya Oishi

小野伸二選手との出会い

vol.14 | 2014/05

新年度の環境には慣れましたか? 今回は高校3年生で経験した静岡県選抜のお話をしたいと思います。県選抜は国体(国民体育大会)に出場するためにつくられるチーム。メンバーには清水商業高校の小野伸二選手や清水東高校の高原直泰選手など、後にJリーグのクラブに入団した選手がたくさんいました。

1番衝撃を受けたのは小野選手。あくまでも私個人が感じたことですが、彼は私が出会った中で最もすごいと思う選手です。小野選手は人にできて自分にできない技があったら、すぐにチャレンジして、すぐに吸収してしまいます。吸収するまで、ほんの数分。とにかくボールに慣れているから、どこでも起用にボールを扱うことができました。

小野選手のようなボールコントロールをする選手は、他に見たことがありません。トラップ一つにしても、どんなボールでも必ずワンタッチで地面に落とす。すごく難しいボールでも簡単にコントロールしてしまうから、パッと見ただけではすごさが伝わりにくいかもしれません。当時からトラップ、キック、ドリブルと、全てにおいて“柔らかさ”がプレーに表れていました。

彼は難しいことを簡単にやってしまう選手。一つひとつのプレーが芸術と言ってもいいほど、完璧にボールをコントロールします。体全体に硬さがなく、ボールコントロールにも硬さがないから、体のどこを使っても“ボールを包み込んでしまう”という表現が最も当てはまるように思います。機会があれば是非、小野選手のプレーを生で見て下さい。きっとサッカーの芸術が分かるでしょう。

また、小野選手は素晴らしい技術に加えて、人が予想もしないアイデアで観客を魅了します。技術の高い選手はたくさんいますが、超一流のレベルにいくためには、その技術を試合中にどう活かすかがポイント。最初からパスをしようとしてパス、ドリブルをしようとしてドリブルなど、小野選手は分かり切ったプレーを絶対にしません。必ず自分がやりたいプレー以外の動作を入れて、相手の裏を突く。これは味方さえも引っかかってしまうことがあります。

やはり、サッカーは相手との駆け引き、言葉は悪いですが、相手をいかにだますかが重要だと思います。小野選手はいつでもドリブルが、パスが、シュートができる準備をしていて、相手の動きや周りの状況から瞬時に判断してプレーを選択する。言葉にするのは簡単ですが、試合中はのんびりと考えている時間がありません。そんな中で彼は素晴らしいアイデアを次々と出すから、相手とって1番警戒される選手なのです。

小野選手は身体的に優れているわけではありません。それでも技術の高さ、状況判断、アイデアでサッカーを楽しんでいます。面白い発想は、人の真似ばかりしていては絶対に身に付きませんから、例えば普段のドリブルの練習から、どれだけいろいろなプレーができるか、どれだけ挑戦してみるかが、自分なりのアイデアを生むきっかけをつくってくれます。

基本的な技術にアイデアが加われば、プレーの幅が広がります。そうなると自分自身が楽しくなり、見ている人も楽しませ、感動を与えられるようになります。今の日本には、技術があってうまい選手はいますが、観客に感動を与えられる選手は数少ないのではないでしょうか。皆さんが自分なりのアイデアを持って、自分の良さをたくさん出して、相手チームから警戒される選手になり、観客に感動を与える選手になってくれることを願っています。

プロフィール

大石 鉄也

1979年11月26日生まれ。静岡学園高等学校から川崎フロンターレ入団。(在籍8年)川崎フロンターレ在籍時代に1年間、ブラジルグレミオに留学。2004年に現役を引退。現在は、子どもたちへの指導を行いつつサッカースクールカリキュラム開発及び指導者の育成にあたる。