HISTORY

『悪魔城ドラキュラ』が生まれ、『キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ』として新生するまで

『悪魔城ドラキュラ』は1986年、ファミリーコンピュータ・ディスクシステム用ソフトとして産声を上げた。ジャンルは当時隆盛を極めた横スクロールアクション。第一作で早くもブランドを確立すると、立て続けに続編を発表。MSX2やゲームボーイへもフィールドを広げていく。やがてスーパーファミコン、メガドライブ、PCエンジン、 NINTENDO64、セガサターン、プレイステーションといった新しいハードの出現により、内容も次第に多様化。ステージクリア型とマップ探索型、2Dと3Dなど、様々なゲームデザインが試みられた。1997年以後、シリーズタイトルのほとんどは、『月下の夜想曲』で人気を博したIGAこと五十嵐孝司が一手に引き受け、一時代を築き上げた。シリーズの生みの親ではないが、2Dの『悪魔城ドラキュラ』と言えばIGA作品という印象が強いかもしれない。しかしながら今回、Mercury Steamとのコラボレーションによる新生『キャッスルヴァニア』の開発にあたり、日本では小島プロダクションが五十嵐に替わって指揮を執る。『悪魔城ドラキュラ』のエッセンスを受け継ぎつつも新解釈を加え、世界最先端のグラフィックを取り入れた新生『キャッスルヴァニア』は、既に英国やフランスで数々の賞を受け、一大センセーションを巻き起こしている。拡大を続ける『キャッスルヴァニア』の世界にご期待いただきたい。

《 新 生 》2010 Castlevania -Lords of shadow- キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ
予 兆2003キャッスルヴァニア

世界へ感染する吸血鬼の血脈

吸血鬼に噛まれた者は吸血鬼になるという。コンピュータゲーム文化そのものの黎明期に誕生した吸血鬼ゲームの"真祖"、『悪魔城ドラキュラ』もまた、多くの若きクリエイター達に感染し、その血脈を広めていった。その結果、21世紀に入ると、『悪魔城ドラキュラ』シリーズの影響を受けたと推測されるゴシックホラー・アクションが多数出現することとなる。2003年にプレイステーション2版『キャッスルヴァニア』がリリースされた以降にそれは顕著で、真祖への賛美と新展開への期待でもあったのだろう。そして2010年、満を持して真祖が復活する。後続が盛り上げたフィールドに相応しい、強力なビジュアルとシステムを携えた『キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ』が、再び頂点に立つ日は近い。

転換1997

THE WORLD OF IGA五十嵐孝司の世界

悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲

『月下の夜想曲』では武器をムチから剣に変更、一方向だったスクロールを双方向化、キャラクターデザインを一新するなど様々な改変が行われた。この作品でディレクターを担当したIGAこと五十嵐孝司は後続作品に於いても陣頭指揮を執り、多様な作品を生み出していく。途中、メインタイトルを『キャッスルヴァニア』として英題と統一するが、『蒼月の十字架』から再び『悪魔城ドラキュラ』に。Wiiで二作品をリリースしたのちは、Xbox LIVE アーケードで『月下の夜想曲』『Harmony of Despair』の配信も開始。

・悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲(プレイステーション、セガサターン)
・悪魔城年代記 悪魔城ドラキュラ(プレイステーション)
・キャッスルヴァニア 白夜の協奏曲(ゲームボーイアドバンス)
・キャッスルヴァニア 暁月の円舞曲(ゲームボーイアドバンス)
・キャッスルヴァニア(プレイステーション2)
・悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架(ニンテンドーDS)
・悪魔城ドラキュラ 闇の呪印(プレイステーション2)
・悪魔城ドラキュラ ギャラリー オブ ラビリンス(ニンテンドーDS)
・悪魔城ドラキュラ Xクロニクル(プレイステーション・ポータブル)
・悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印(ニンテンドーDS)
・悪魔城ドラキュラ ジャッジメント(Wii)
・ドラキュラ伝説 ReBirth(Wii)

五十嵐孝司、通称IGA。中期の『悪魔城ドラキュラ』は、彼の感性に支えられていた。しかし彼の初『ドラキュラ』、名作の誉高い『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』を担当した際は、シリーズのメインストリームを創るつもりは全くなかったという。「"X"がついているから正統な続編じゃないというのを免罪符に、何もかも変えるぐらいの勢いで創っていました」と、五十嵐は語る。「ドラキュラという題材はもっと耽美なものであるべきだという意識がありました。それでマッチョな要素をどんどん排除していったんです」ーキャラクターイラストを小島文美、音楽を山根ミチルに依頼した五十嵐は、耽美で退廃的な世界観の演出に成功する。さらに遊びごたえを追求すべく、面クリア型だったステージ構成を場内探索型に変えるなどの改革を行った。一作限りだったはずの冒険はしかし世界中に受け入れられ、いまもなお続いている。

悪魔城ドラキュラHarmony of Despair

Xbox LIVE アーケード にて 配信中
悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲(XBLA & PSN) / 悪魔城ドラキュラ Xクロニクル (PSP) も 配信中

拡散1993

悪魔城ドラキュラ (X68000)

傑作の呼び声高いX68000版を最後に第一作『悪魔城ドラキュラ』移植の時代は終わり、CD-ROMドライブ採用のPCエンジン、16ビットCPU搭載のメガドライブ、スーパーファミコンなど、よりハイスペックなコンソールでの続編制作が始まる。映像や音を重視する傾向が強まった。

・悪魔城ドラキュラ(X68000)
・悪魔城ドラキュラX 血の輪廻(PCエンジンスーパーCD-ROM2)
・バンパイアキラー VAMPIRE KILLER(メガドライブ)
・悪魔城ドラキュラXX(スーパーファミコン)
・悪魔城ドラキュラ 漆黒たる前奏曲(ゲームボーイ)
・悪魔城ドラキュラ黙示録 悪魔城ドラキュラ黙示録外伝(ニンテンドー64)
・悪魔城ドラキュラ Circle of the Moon(ゲームボーイアドバンス)

黎明1986

悪魔城ドラキュラ (ファミリーコンピュータ ディスクシステム専用)

『悪魔城ドラキュラ』の好評を受けて『ドラキュラⅡ』『悪魔城伝説』が作られた。このファミコン三部作でコナミの硬派なアクションゲームといえば『悪魔城ドラキュラ』という評価が確立。携帯ゲーム機の元祖ゲームボーイの展開、第一作の他機種への移植が盛んになった。

・悪魔城ドラキュラ(ファミリーコンピュータ ディスクシステム専用)
・悪魔城ドラキュラ(MSX2)
・ドラキュラⅡ 呪いの封印(ファミリーコンピュータ ディスクシステム専用)
・ドラキュラ伝説(ゲームボーイ)
・悪魔城伝説(ファミリーコンピュータ)
・ドラキュラ伝説Ⅱ(ゲームボーイ)
・悪魔城ドラキュラ(スーパーファミコン)

草創期『悪魔城ドラキュラ』の衝撃

初代『悪魔城ドラキュラ』は非常に高難度のゲームと評価されている。確かにエンディングまでたどり着けたプレイヤーは限られていたと思われる。それでも、難しいことだけがこのゲームのすべてではなかった。計算ずくで難しさが演出されていたのだ。ギリギリで敵の動きを避け、ギリギリで攻撃を仕掛ける。すべてがギリギリの設計であるだけに、撃破したときの快感は大きい。その法則に気づいた純粋なアクション・ゲーム愛好者の支持を得て、「難しすぎるゲーム」という評価はやがて、「見せ場だらけの名作アクション」へと変容していく。純粋すぎるほどアクションを追求し続けるシリーズの中で、寄り道とも思える謎解きアクション『ドラキュラⅡ 呪いの封印』もあったが、すぐさま『悪魔城伝説』で本来のスタイルに戻り、以降、硬派アクションの王道とも呼べる存在となっていく。ゲーム性ばかりでなく、演出に身震いしたプレイヤーもまた多かった。当時はハードウェアの性能上、きめ細かな絵を表現することは困難だったが、その制約の中で徹底して「恐怖」を与えるビジュアルを創り上げたことは、開発者のこだわりの高さの証と言えよう。すすけた壁面、燃える燭台、幻のような死神。安易にデフォルメされた絵などひとつたりとも発見できない。音楽もまた、制約の中で類い稀な恐怖を演出した。当時のハードでは再現不能と言われたロックをベースに、独自の解釈を加えることで、類を見ない「怖さ」を創り上げた。特に『ドラキュラⅡ 呪いの封印』の音楽には今なおファンが多いという。その後、シリーズは様々なプラットフォームに発展を遂げ、多くのクリエイターが様々な解釈の『悪魔城ドラキュラ』を生み出すことになる。しかし、シリーズのアイデンティティたるゲーム性へのこだわりとゴシックホラーの世界観は、初期作品にて既に完成されていたと言える。