METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY
ORIGINAL SOUNDTRACK


「MGS2」ゲーム本編と同時に、サウンドトラックCD「Metal Gear Solid 2 original soundtrack」が発売になりました。
本CDは、ゲーム中のデモシーンで使用された楽曲を中心に構成されています。
「ザ・ロック」「エネミー・オブ・アメリカ」などを手掛けたハリウッドの作曲家、Harry Gregson-WilliamsがMGS2の為に書き下ろした楽曲の数々、村中りか作曲のエンディングテーマ等、聴き応えのある濃密な内容を、MGS2音楽担当の日比野則彦が様々な制作秘話を交え、ここに紹介いたします。
いよいよサントラの後半、09) ~ 17) のプラント編の曲を中心にご紹介します。


< NEWS1 >
ハリー・グレッグソン-ウィリアムズ氏は、年末公開のCG映画『シュレック』の音楽を担当。
アメリカでこの映画を観てきた小島監督は、「ハリーの新境地。スコア盤サントラ求む!!」と絶賛。
ハリー氏は、ロバート・レッドフォードとブラッド・ピット主演の『スパイゲーム』(トニー・スコット監督)でも音楽を担当。
「MGS2でハリーの音楽にハマってしまった貴方は、要チエック!!

< NEWS2 >
実際のプレイアブルなシーンで使われている楽曲や、今回収録されなかったデモシーンの音楽を集めた、「original soundtrack2: the other side」が来年1月末に発売予定!!


曲目紹介
01) "Metal Gear Solid" Main Theme
前作「メタルギアソリッド」から使われているTAPPY作曲のメインテーマを、Harryがオリジナルなセンスで再アレンジしました。
2000年のE3ショー(アメリカ最大のゲームショー)にてMGS2を初公開する際のデモ映像に使用したのを皮切りに、世界のゲームショーで幾度となく流れることになったお馴染みの曲です。
ゲーム本編では、冒頭に流れるカイル・クーパー制作の映像クリップでショート・バージョンが使われていますが、ここではHarryが作ったままのオリジナル・バージョンを収録しています(ちなみにE3 ショーでは恥ずかしながら私の曲やサックスソロもHarryの曲の間に挟まっていました)。
嵐の中、ゴルルコビッチ兵のタンカー制圧~船内でオセロットのリボルバー炸裂~甲板でのオルガとの対決~壮大なオーケストレーションで締めくくられるエンディングではスネークがタンカーの爆発から間一髪で脱出する、というのがE3映像の流れでした。タンカー編のキーポイントになる映像が盛り込まれたこのトレイラーは、その後の音楽制作の方向性にも大きな影響を与えました。
02) Opening Infiltration
タンカー編のオープニングデモで使用されている曲です。
「橋上のスネーク」~「スネーク、タンカーへダイブ」~「甲板に立つスネーク」の3パートからなるデモで、最も早い時期から音楽が完成していた前半部分(スネークがタンカーへ着地するまで)は2000年秋の東京ゲームショーで初公開しました。
当時は、嵐の前の静けさを感じさせるゆったりとした音楽から、本家ハリウッドらしい激しいアクション曲へつながるバージョンでしたが、ゲーム本編では更に後半を追加しました。
実際にはゆったりとした潜入曲に、アクション曲を挟み込む形でエディットを施しています。
「スネーク、タンカーへダイブ」のパートはスローな演出ながら緊張感のあるシーンなので、間延びしないように曲の方でストーリーを作り、場所によってリズムをカットして幻想的なクワイヤーを強調したり、逆にリズムを前面に出したりと、色々アレンジを加えました。この曲はゲーム中では5.1チャンネルでも聴くことができます。
03) Russian Soldiers from Kasatka
Harryの得意とするテクノのスタイルで潜入の緊迫感を表現するとこのような仕上がりになりました。
パーカッションの音色が非常に個性的で、一つ一つの音はすごく軽い音なのに、奥行き感を大事にした緻密なプログラミングにより全体としてはすごく厚みがあります。また、尺八の音がまるで息のように聴こえ、緊張感を高めています。私のお気に入りの曲で他のシーンでも使いたかったのですが、このシーンのイメージが焼き付いてしまい、結局このシーン以外で使うことはありませんでした。
ゲーム中では、ヘリが飛び交う効果音とぶつからないように、特定のドラムのパートをごっそり抜いていますが、ここではオリジナルバージョンを聴く事ができます。
04) Olga Gurlukovich
この曲はオルガにまつわるシーンで色々と形を変えて登場します。
Harryの原曲をハリウッドの超売れっ子ミキサー、Alan Meyersonが豪快なフェーダー操作によって非常にダイナミックなものに仕上げてくれました。
エンディングテーマのメロディが微妙に曲中に刷り込まれているのがおわかりでしょうか?
この曲も映像に合わせる為、カットの変わり目にオーケストラのアタックがぴったり合うように拍を抜いたり、部分的にテンポを縮めたり、また途中の雨が止むシーンではベース以外を全てカットしたり、と緻密なエディットを施しています。
05) Metal Gear?
スネークがメタルギアRAYを発見した時の曲。
シンセサイザーの幾重にも重なる効果音が幻想的な雰囲気を作り出しています。美しいコーラスも不気味さを助長しています。音のコラージュ、といった感じです。
こういうアンビエントタイプの音楽は、サンプラーが一般的になってからはものすごい可能性が出てきたと思います。つまり、アイデア次第でありとあらゆる自然界の音を手軽に曲に用いることができ、また簡単に素材が準備できます。思い付きをすぐに形にできるというのはすごいメリットです。
ちなみにHarryはroland s-760という伝統的なサンプラーを20台以上ラックにマウントしており、3年間電源を切ったことがないそうです。
06) Revolver Ocelot
オセロットのテーマとして、ゲーム中で度々使われている楽曲です。
1曲目のメインテーマのアレンジと同じリズムが使われています。E3トレイラー以降、オセロットのイメージとこのリズムは切り離せないものとなり、メインテーマのその部分からこの曲を作って欲しいとHarryにお願いしました。
すっきりとしたトラックですが、やはりパーカッションの打ち込みにHarryのセンスを感じます。一見単なるループのように聴こえますが、非常にきめ細かいエディットが施されています。メロディを入れずして曲が成立している、素晴らしい一例です。
07) RAY escapes
水中から海上へ、荒れた海面、そして再び水中深くへ、という動きを音で演出してみました。Harryの楽曲と私の追加ネタを繋ぎ、1曲に仕上げています。
前半部分の曲は2000年のE3ショー以来、メタルギアRAY登場シーンで使っていたもので、RAYといえばこの曲、というイメージが固まっていました。
非常にドラマティックな曲ですが、はたして何がおこっているのか、これを知りたい方は今回のソリッド・スネークの任務を最後まで全うして下さい。
ちなみにゲーム中では画面にあわせるための編集が入り、曲が多少短くなっています。
08) Can't Say Good Bye to Yesterday (Piano Version)
エンディングテーマのピアノソロバージョンです。
ジャズ史上最も重要なピアニスト、ビル・エヴァンスも演奏したという、数々のジャズの歴史的名演を作り出してきたピアノを使っての、Onaje Allangumbsの名演です。録音の際、彼に渡したのはエンディングテーマのメロディとコード譜のみ。よくここまでオリジナルなストーリーを、しかも即興で作り上げられるなあ、と感心します。
09) Big Shell
雷電が主人公の「プラント編」オープニングで使われた曲です。
ゲーム中の実際のオープニングシーンではかなり細かい修正が施されて使用されています。
画面のほうが出来上がってから、Harryの既成曲を合わせていくので、ところどころ変拍子にしたり、くり返しを追加したり、テンポを落として少し伸したりして、画面のキメポイントに合わせています。
この曲もゲーム中では5.1チャンネルで聴くことができます。ちなみに、体験版のタイトル画面の曲は、この曲を元にしたものです。
10) Fortune
孤独なフォーチュンのテーマがソプラノサックスで奏でられます。
音楽にはその状況を表現するものと、人の気持ちを表現するものがありますが、戦況下でもあえて彼女の気持ちの流れを追うことを意識しました。
緊迫するドラムループの直後に、実際は大爆発がおこるので、爆発音を最大限に聴かせられるように音楽の方はわざと隙間を作ってあります。
また、プラント編では至る所でソプラノサックスの音色をフィーチャーしています。
11) Kill Me Now!
うって変わって、激しいノイズ・テクノの曲です。
昨年の東京ゲームショーで、fortuneという新キャラを紹介する際にこの曲を使用しました。
実際のゲーム中では、ボス戦でこの曲のイメージを元にして作られた別曲が採用されています(1月末発売のsoundtrack2: The Other Sideに収録)。
イギリス人のHarryならではのセンスを感じる1曲です。
12) Vamp
Harryには「倉庫の合間の、敵が隠れていそうな細い通路を潜入していくイメージ」と伝えて出てきたのがこの曲。
雰囲気系のサンプル音が数多く織り込まれており、こもりぎみなパーカッションの音がヴァンプの不気味なイメージと重なります。
13) The World Needs Only One Big Boss!
サンズ・オブ・リバティの中心人物、ソリダス・スネーク。
前半部分がHarryの作曲をベースにしており、初めてソリダスが登場するところでも使われています。
メロディが全くない曲なのに非常に印象に残る曲です。後半はオリジナルですが、最後の不気味なうめき声は、はたして誰の声でしょう?
コナミの音楽ゲームがすきな方ならきっと御存じだと思います。
詳しくはゲーム最後のスタッフ・ロールか、1月末発売のsoundtrack2: The Other Sideをご参照ください。
14) It's the harrier!
ゲーム中ではこの曲のほんの一部しか使われていないのが残念なところですが、こういうアクションシーンの音楽はさすが本場、ハリウッドの得意とするところです。
Harryの原曲はもっとテクノ色の強いものでしたが、これもまたAlanのミックスによって非常にダイナミックな、映画的なサウンドへと変わりました。
15) Arsenal Is Going To Take Off!
前半部分の「水」を連想させるHarryのアンビエントミュージック(実際は2分程あるのですが30秒程度に凝縮しました)は、オープニングをはじめとして、水の出番の多いプラント編で数多く使われています。
あるきっかけを機に突然はげしいハリウッド太鼓の応酬へと変わります。
この曲もまた、メロディが皆無で、アルペジエイターとリズム、ノイズだけですが、画面にぴったりの切迫した緊張感を出しています。
16) Who am I really?
すべてシンセサイザーとサンプラーによる演奏です。
まさに今回のゲーム製作の末期、最後のデモシーンが出来てきた時に、翌日の朝までに完成させなければいけないというぎりぎりの状況下で作ったものです。
ちなみに後半のピアノのメロディは、メインテーマをもじったものです。
17) Can't Say Good Bye to Yesterday
村中リカ作曲による、エンディングテーマ。NYの第一線で活躍するジャズプレイヤーによる演奏です。
生ストリングスのアレンジが大変美しく、Carlaの少しハスキーな声と相まって何か古き良き時代を感じさせるものがありますが、それぞれのプレイヤーのやっていることに耳を傾けると(特にサックスソロのあたりとエンディング)ベース、ドラム、ピアノがいかにお互いのやっていることに反応しながら非常にモダンでユニークなプレイを繰り広げているかが分かります。この辺の自己主張の仕方がジャズの面白いところです。
フェイクオーケストラとシンセサイザー中心のMGS2の音楽に対して、非常に人間味のあるエンディングテーマが対照的で、またそのあたりが意味深なところでもあります。