「NUTが木星に建造した辺境開発の基幹港、コロニー・アンティリア。アンティリアではNUTの技術力の粋を集めた循環システムにより、地球や火星からの物資補給をほとんど必要としないシステムが運営されています」
LEV乗り達で賑わう、雑然とした食堂の壁際では、その場には不似合いなスーツを着たレポーターがカメラの前で解説を続けていた。
「そしてここ、木星8番目の衛星カリストではアンティリアの水資源を確保するための採氷作業が行われています。20世紀、地球では人類全体の約40%が水資源の確保に苦労をしていたと言われていますが、この宇宙時代ほぼ100%の──」
昼食時の食堂は、多くの採氷労働者で混み合っていたが、マイク片手の女性とカメラマンの周りには、誰も近寄ることなくアンバランスな空間ができていた。作業用スーツに身を包んだ労働者達は誰もが壁際を見ようとせず、だが興味津々で聞き耳を立てながらカウンターの前に行列を作っている。ディンゴの向かいに座ってマイペースにシチューを口に運んでいるアンジーも、いつもと違いどことなくすましている感じがするのは気のせいではないだろう。
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