"アヌビス ZONE OF THE ENDERS" レビュー その2

.
今振り返ってみると、前作のZ.O.EにMGS2の体験版が同梱されていたことはZ.O.Eにとって不運だった気がする。 勘違いしないで欲しい。 ゲーム発売のかなり前の時期にMGS2を「一口味わう」ことが出来たのはとても喜ばしいことであった。 その体験版がメインとなるはずの商品を日陰に追いやってしまった。 実際、Z.O.Eの前にMGS2のディスクを起動しなかった人なんていないだろう?まさにそのことを言っているのだ。 そしてそこが問題である。 そうであってはならないのだ。 Z.O.Eほどの個性的なゲームであればなおさらである。


.
Z.O.EをMGS2体験版の「刺身のつま」ではなく、ちゃんと一つの作品として受け止めることの出来た人間にとってZ.O.Eは「メカがもたらす至福」であった(長続きする至福ではなかったかも知れないが)。 確かに作品自体はかなり短かったし、根本的におかしい部分もあったが、その根底には素晴らしさもあった。 結果としてはとても楽しい体験をさせてくれた。 しかしやはりプレイしながら「もっとこうすればさらに良くなったのに!」と考えずにはいられなかった。

こういうことがあったから、『アヌビス』に対する関心はそれほど高くなかったのかも知れない(その素晴らしいビジュアルにはかなりそそられたが)。 全く新しいディレクター(村田周陽氏)の指揮のもと、前作に対する批判を改善することにより、コナミは前作で成し得なかったことを本作で成し遂げるチャンスを得たのである。


.
遊び始めるとすぐに「制作者達はユーザーの意見を聞いてくれてるんだ」ということを知らされる。 例えば、主人公はもうあの「ちっぽけな」レオではない(ゲームには登場するが)。 今度のディンゴは比べものにならないくらいカッコいい。 ゲームの環境(ステージ)も今回はかなり豊富で、雪山で始まり、火星の荒野へと舞台は移っていく。 ストーリー要素も以前よりもイイ感じで盛り込まれていて、前作のCGムービーは今回はカッコいいアニメになっている。 ストーリー自体もよくなっていて、今回はちゃんとしたエンディングが待っている(前作をプレイした者はきっと満足するだろう)。 ゲームの長さ自体も長くなっている(極端に、ではないが)。 難易度もいくつかあり、プレイを経て登場させることの出来る隠し仕様の数々を考えると、かなりタップリ遊べると思う。


.
何よりも素晴らしいのは、前作で満足のいった部分に関しても今回改善していることである。 グラフィックを見てみよう。 もう既に目を見張るビジュアルであったにも関わらず、コナミは理解出来るレベルを超えるくらいのものに昇華してくれた。 アニメっぽい様々な見せ方によって本作がよりカッコよくなったのに加え、エフェクトのあまりの凄さに「これってPS3なんじゃないの!?」と思ってしまうようなこともしばしば。 ゲーム性も数段上がっており、いっぺんに百機くらいの敵を相手にするだけの攻撃力を備えている。 とにかく、ゲーム全体が前作の2倍以上の面白さなのである。

残念ながら『アヌビス』は完璧ではない。 ストーリーの伝え方で「おや?」と思ったりもした。 日本のアニメにありがちな「ズレてる感」が見受けられた。 「ここでもっとこの部分を強調しなくていいの?」みたいなものがあった。 もう少し細かい部分ではゲーム進行が直線的で繰り返しが多かったりする。カメラが時々ギクシャクしたりもする。


.
それらはさておき、こんなに凄まじく、内臓がひっくり返るような素晴らしい体験をさせてくれるゲームが他にあるだろうか? そこら中を素早く飛び回り、巨大戦艦を吹き飛ばし、狂ったような光のショーを目の当たりにした時に感じる自分の血の流れは他では体験出来ない。 このこと一つだけをとっても、『アヌビス』はゲームをプレイする者全てが体験すべきである。


"Official U.S. PlayStation Magazine"誌 Sam Kennedy氏


PREV